稲垣足穂(1900~1977)を知っていますか?
イナガキタルホ、日本の小説家です。
代表作は「一千一秒物語」
20歳前後に読んだと記憶しています。
当時、こんなすてきな小説?があったんだと、衝撃を受けました。
彼が17歳のころから書き溜めた短編というか、ほんの短いおはなしの集まり。
70篇あるおはなしのタイトルは
・月から出た人
・星をひろった話
・流星と格闘した話
・ある夜倉庫のかげで聞いた話
・月とシガレット
・月光密造者
・ガス燈とつかみ合いをした話
・THE MOONRIDERS
・銀河からの手紙
などなどです。
お月さまや流星、黒猫やシガレット、などがくりかえし登場します。
青い煙でパチン!という感じですか。
大正時代に書かれた作品ということですが、今現在読んでみても、古めかしいところはありません。
こんなみじかいおはなしの単語や言葉の組み合わせで、すごくイメージが広がるというか、なんかノスタルジックな気分になるのです。
「宇宙的郷愁」なんていわれると、なんとも不思議な気持ちになってしまいます。
タイトルの「六月の夜の都会の空」は「弥勒」という彼の自伝的小説の中にでてくる言葉。
【--ある昼休みの教室の黒板に、Iは「六月の夜の都会の空」という九字を走り書きして、直ちに消してしまった。「いや何でもありやしない」と彼は甲高い声で江美留に云った。「-でもちょっといい感じがしやしないかい?」
なるほど! 六月の夜の都会の空。
この感覚は自分にも確かに在った。夕星を仰いで空中世界を幻視する時、そんな晩方はまた、やがて「六月の夜の都会の空」でなければならない。ーー】
(稲垣足穂 「弥勒」から)
というわけで、毎年6月になると、なんとなく夜空をながめて物思いにふけってしまうのです。
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